人前に立つのが苦手な私が講師ですか!?
「人前に立つのが苦手な私が講師ですか」という題で、オンラインサロン笑い道の月例会(ルナ会)で2024年2月にお話をしていただきましたのは、神奈川県横浜市在住の杉本由美さんです。
彼女は日本笑いヨガ協会の講師として活躍しているだけあり、とびきりわかりやすい教え方で、笑いヨガリードも魅力的です。
しかし、ご本人は人前で話すのはとても苦手といいます。
物静かではありますが、たいへん味わい深いお話でした。
(高田佳子)
目次
笑いヨガの活動について
杉本由美です。
まずは、自己紹介から始めます。
笑いヨガとの出会いは、2016年です。
2日間の講座受講後、すぐに笑いヨガティーチャー養成講座があるとのことで、お声がけいただきましたので、富士山のふもとで開催された講座に参加しました。
笑いヨガティーチャー養成講座受講後は、すぐ笑いクラブを始めたいと思いました。
時間を置くとなかなか足を踏み出せなくなるので、まずはハコを確保と考え、最短で予約できた3ヶ月後の2017年3月に笑いクラブをスタートさせました。
そこから、日本笑いヨガ協会のからの紹介、笑いクラブ参加者、人づて等で、地域での介護予防教室や、介護者の集いでの笑いヨガ講師や研修講師といった笑いヨガのお仕事をやってきました。
もちろん、高齢者福祉関係のデイサービスや老人保健施設といった場所での定期的な笑いヨガセッションも提供しています。
そして、2023年からは笑いヨガリーダー養成講座講師ということで、関わらせていただいております。
小さい頃の私
私は1974年に生まれ。兄と弟の3人兄弟の真ん中です。
男兄弟に挟まれていて、アクティブに遊んでいましたが、人前で話すのは苦手でした。
授業中に手が挙げられないとか、先生にあてられないかと緊張していた記憶があります。
人に見られたり注目を浴びたりする事への恐怖心がありました。
小学校低学年の頃、母親の勤め先の行事でキャンプに参加したときのエピソードです。
家族単位で自己紹介があったのですが、母親がまとめて紹介するのではなく、一人一人にマイクが渡り、自己紹介するのです。
兄の次に弟が自己紹介した後に、私の番が来ました。
名前を言うだけなのですが、緊張しすぎて、直前に耳にしていた言葉がでました。
「次男の◯◯です」
と弟が言った言葉そのままを言ってしまったのです。
もう、その場にいた人みんなが大爆笑。
いまだに家族が集まったときの語り草になっています。
私にとって人前でしゃべることは、名前を言うだけでも大変なことだったのです。
また、積極的に何かをやるタイプというよりは、何事も客観視しているような子供だったと思います。
小学校6年生の時の担任の先生は、誕生日を迎えた一人一人に必要な言葉を達筆な墨文字で描いて、プレゼントしてくれました。
私は「欲」と書かれたものをいただきました。
他の子はもうちょっとポジティブな分かりやすい言葉が多かったと思います。
12歳の私にはピンと来なかったのですが、いまだに印象に残っています。
もうちょっと欲を持ちなさいという意味だったのでしょう。
今から思えば、先生にはよく私のことが見えていたと思います。
仕事のこと
新卒で就職したのはホテルでした。
母から看護師になればと言われていて、ひそかな反抗心で全く別の仕事を選んだように思います。
1998年、22歳になってから転職し、介護職につきました。
最初は特別養護老人ホームでした。
レクリエーションを担当するときは、やはりドキドキしていました。
その頃、もし職場から笑いヨガを習ってやれと業務命令があったら、全力で逃げていたと思います(笑)
2000年に結婚し、子どもは2人、今年23歳の娘と20歳になる息子がいます。
出産・子育てといろいろありましたが、職場は変わっても、ずっと介護の仕事を続けています。
療養型の病院で介護の仕事をしている時、「この人の人生の終わり方ってこれでよかったのだろうか」というような体験がありました。
病院ですので、お看取りの場面もあります。
ここに至る前に何か出来ることはなかったのかの気持ちでデイサービスへ転職しました。
そこは、認知症の方に特化した施設で、12名定員の小規模な事業所でした。
そこでも、本当にいろんな方に出会いました。
周りの人も、ご本人ももうどうにもならないっていうような感じの方とか、すぐに暴力が出る方等、デイサービスだからといって人生の重みを感じずに済むわけではありません。
認知症そのものは、初期の初期だったとしても、不安のどん底という方もいらっしゃいました。
私の人生経験では対応が難しい、いろんな方が本当にたくさんいらっしゃいました。
困難な場面では、無意識に目の前の人に全集中しているのです。
こう接したらいいとか考えているわけではなく、自然に行動ができています。
自分がどうとか周りの目がとかっていうのが、全然気にならなくなったのですね。
その頃に、笑いヨガに出会っています。
大人になったからといって人前に立って話をすることが大丈夫になるわけでもなく、人前に立って笑いヨガをリードしている自分を客観的に見てすごく不思議だし、疑問にも思っていました。
人前に立つのが苦手な私が講師ですか?
昨年から日本笑いヨガ協会のリーダー養成講座の講師を担当させていただいています。
この肩書きに、自分が全然追いついていないです。
日本笑いヨガ協会の笑いヨガリーダー養成講座は、高田佳子さんが一人で290回(当時)も担当してこられたものです。
こんな私が講師ですか?と今も思っています。
高田さんからお誘いをいただいて、「はい」とは言ったものの、その時は人ごとのような感じで、実感を得るには時間がかかりました。
私にできるのかなとも思いましたが、ぼんやりした感じです。
しかし、ことはどんどん進んでいきました。
できれば人前で喋りたくない私です。
なぜ断るという選択をしなかったのかなと考えたら、目の前に集中することで、行動ができるということを、介護の仕事で経験していたことが大きいかなと思います。
人が苦手、だからこそ人を知りたいのです。
だから、人に興味があるのですね。
家族そろって動物が大好きで、地域でムツゴロー家と言われていました。
動物ってすごく不思議!わからないから知りたいのです。
考えてみたら、人間も生き物です。
昔から、不思議な人間にすごく興味を持っていたのだと思います。
介護の仕事を選んだのも、人間に対する興味だと思います。
笑いヨガを始めた頃は、高田さんの丸真似をしていました。
でも、やっていくうちに私は高田さんになれないなっていうことに気がつきました。
憧れるのをやめ、自分の言葉で伝え始めました。
そうしたら、なんとなく相手が見えるようになってきて、変な緊張が減っていきました。
笑いヨガリーダー講座講師の3つのポイント
リーダー養成講座の講師という形で関わらせていただくにあたって、もちろん自分なりに準備しました。
まずは、全体の把握です。
笑いヨガリーダー養成講座の再受講はほとんどしていません。
オンライン講座になってからは、お手伝いという形で関わらせていただくことはありましたが、その役割もしっかり理解できていなかったし、ましてや笑いヨガが初めての人に伝える視点は、意識したことがなかったので、正直困りました。
私の前に、日本笑いヨガ協会スタッフの辻本絵美さんがオンラインで笑いヨガリーダー養成講座の講師をしました。
その映像を、全部文字に起こしました。
全体の流れと伝えるべきことを、自分なりに理解し、整理して大まかに把握しました
2つ目に台本作りをしました。
笑いヨガセッションのリードとは全く別物です。
講座では、毎回同じことを的確に伝える必要があります。
余計な言葉、余計な動きは、受講者に間違った形でインプットされます。
余計な言葉や動きは、自分の中の「保守」が無意識に出しているものだと思っています。
逆に、言葉が足りないのは、自信の無さかと私自身は感じています。
私の特性は、他の人とは違う可能性もあります。
私は文字を読んで理解するタイプではありません。
緊張すると、文字は全く頭に入ってこないし、真っ白になります。
だから、誰かの作った文章を伝えることは、ハードルが高すぎたので、自分が理解した流れを自分なりの言葉で台本にし、まずは頭に入れました。
3つ目は、基本動作の分解です。
手拍子や掛け声は、普段何気なくやっていることです。
身に着いてしまったら、どうということはないものですが、教える際には一つ一つ分解し、意味を結びつけて言語化し、受け取りやすい表現を探しながら、自分の言葉にしていく作業が必要なのです。
これは、毎回修正しながらやっています。
参加者を意識してみて、その場で感じ取ったことを、すぐにフィードバックできればいいのですが、すぐに対応できないこともあります。
その場合は、受講者には本当にごめんなさいなんですけど、少なくとも次の講座までには修正し、きちんと伝わる言葉にできるよう、気をつけています。
講師としての工夫
まずは、講師として自分の特性を把握して、教え方を工夫することが大事だと考えています。
私の場合は、典型的な聴覚優位の認知特性を持っています。
五感のうちの耳から入る情報に過敏な分で、音が重なったり、音声多重がとても苦手です。
しかし、受講者がどのタイプかはわかりません。
そもそも目から入った文字情報は、記憶にとどまりにくいので、笑いヨガのエッセンスがきちんと伝わるよう、先ほど述べたポイントを、自分なりのやり方でアウトプットできるように整理し、自分の台本をつくりました。
Zoomでの講座も一度に情報が入ってこないよう、自分の特性で苦手なことが起こらないよう、工夫をしています。
2つ目は、流れをつくることです。
講座では、参加者の反応は予測できないことがあります。
自分自身が考えていることとか、相手に対してなんとなく感じたこととか、無意識をすぐ言語化することは、難しさがあります。
それでも、時間内に伝えるべきことを、伝えきらないといけません。
何をするのかは、台本という言葉での表現ではないものが必要になります。
自分なりの方法としてはまず線のない落書き帳に書き出し、チャート化したものを準備しました。
私の場合、丁寧に箇条書きにして書いてしまうと、頭に入らないで、短い言葉で書いてまるで囲ったり矢印をつけたりっていう感じです。
ずいぶん昔になりますが、笑いクラブを始めるときや、笑いヨガの講師依頼をいただいたとき、どういう風にやるかを相手の方のお話を聞き、要望を図にしてインプットしてきました。
3つ目は、集中力です。
人と対面で会ったときは、無意識に五感を使って相手を感じ取ることができます。
オンライン講座は、小さな枠の中で向こう側に人がいて、見える視覚と聴覚だけで、相手を感じ取るのです。
これは、ものすごく集中力がいることです。
それを、講座の8時間保つっていうことが最初は至難の技でした。
もう終わった後は、廃人のようになっていました。
今はちょっとは慣れてきたかなとは思いますが、最後迄集中力を途切れさせないよう、工夫することがとても大切です。
4つ目は関わり方です。
参加者は、皆さん大人です。現在に至るまでの経緯が、人それぞれ違っています。
純粋に受け取ってくださる人もいます。
しかし、ご本人も気がついていない、小さなこだわりやトラウマのようなものを持っているかもしれないと感じることがあります。
構えていて、そうしているから保っていられるものがあったりします。
いろいろな方がいる中で、皆が受け取れる伝え方とは、どのようなものなのか、これは正解がないのかも知れませんが、考え続けていることです。
あと、覚え方も人それぞれです。
大雑把に全体を把握してから中を埋めていくタイプの人、
あと上から箇条書きで一つ一つ丁寧にこう埋めていくタイプの人、
全部に理屈が理解できないと、落とせない人、
いろんな人がいると思います。
この人には何を伝えたらいいのかなとか、どこまで求めたらいいのかなとか、そもそも自分の感覚ってあってるのだろうかなっていうのは、毎回試行錯誤で悩みながら、すすめています
笑いヨガに対しての本気度も、人それぞれです。
人前で笑いヨガをリードすることは、自分自身と向き合うということでもあると私は思っています。
そう考えると、この人は今はそのタイミングじゃないのかなとか、時間をじっくりかけていくのかなとか、そもそもそれは必要としてないのかなと思うこともあります。
個人のことではなく、会社の研修として受講される方も多いので、意識のばらつきは仕方がないことなのです。
しかし、講師である私が必要以上にいろんなことを考えすぎていくと、頭の中から言葉がどんどん消えていくので、考えすぎるスイッチを、講座中には入れないよう、気をつけています
講師として気づいたこと
笑いヨガリーダー養成講座の講師として笑いヨガを伝える事で、気がついたことがあります。
第1に、見える範囲が広がるということです。
リーダー養成講座の時間は、すさまじい集中の時間です。
必要なことも、余計なことも見え、考える機会が増えたので、より見える範囲が広がってきたと感じています。
第2に、瞬時の処理とアウトプットです
参加者のそのときの状態等の情報収集は、そこそこできているとは思うのですが、それを処理してアウトプットしていくのが、私にとっては結構大きな課題です。
第3としては、相手がいることによって自分が成り立っているということです。
誰かの人生の黒子でいることが、自分の存在価値であり喜びであるという風に今は思っています。
サブキャラが主役の人生という感じですかね。
実は、去年の春に子どもたちが2人同時に就職し、家を出ました。
ずっとほぼワンオペで子育てをしてきました。
自分で食べていく力をつけることが、子育ての短期目標でしたので、一応一旦区切りがつきました。
だから、今は結構好きなことだけをしていて、自分のペースでいろいろなことができています。
それが、とても楽しくて毎日すごく充実しています。
それと同じで、自分と関わった人、目の前の人が笑っているとか、どんどん輝きを増すとか、望みを叶えていくとか、あとは顔が笑ってなくてもちょっと肩の力が抜けていくとか、短い時間で安心感を得ているなっていうのを目の前で参加者に見せていただけるのです。
それだけで、今の自分はこれがやりたいんだなとか、こういうふうにありたいんだなっていう風に感じることができます。
4番目としては、自分を客観視することのおもしろさがあります。
人前に立って笑いヨガをリードしている自分を客観視し、不思議に思います。
あんなにも、人前でしゃべることが苦手で、何の専門家でもない自分がなんで講師をやっているのかと思うのです。
しかし、講師という役割で笑いヨガにかかわり、講師という視点で笑いヨガに向き合う機会を得て、ただ笑いヨガが好きで、笑いヨガをしている人も好きで、笑いヨガを伝えたい。
もうそれだけでいいんだっていう風に思えるようになってきました。
難しいことはその道の専門家にお任せすればいいので、自分のできることをやればいいのです。
最後5つ目。
笑いヨガに完璧はないということです。
人にはそれぞれバイオリズムみたいなものがあるのかもしれないのですが、何にも意識しなくても、参加者の方と自然にチャンネル合致するような感じの時もあれば、もう考えても考えなくてもなんかうまくいかないなっていう時があるように、自分の笑いヨガのフィードバックにもいろいろあります。
今日のリードは最高だったと思えることは、あまりなくていつも振り返ってあの時のあの言い方はちょっと違ったかなとか、あの人ああだったのと気づいていたのに何もフォローできなかったなーとか、今日はちょっと自分のペースを出し過ぎたとか、余計なこと言ったかなーとか、逆に言葉足りなかったなとか、毎回毎回反省点があります。
多分これからも、どんなに経験を積んでも、それは変わらないと思います。
もちろん楽しかった、元気になったといった言葉での感想をいただいたり、参加者の変化を目の当たりにしたりしたら、素直に嬉しいです。
しかし、今日のリードはトータルで完璧だったと思えたら、もしかしたら笑いヨガをリードする役割は、自分の中では終わりのような気がします。
奢らずに、地道にやっていきたいです
いろんなアンテナを立ててワクワクすることを楽しんできたい
今後の目標ですが、「決めない」という一つ。
もちろん、笑いヨガは人を幸せにする力があるから、リードできる人がもっと増えたらいいなと思っています。
笑いヨガができる場所も、もっと増えたらいいなとも思います
笑いヨガをすることを目標にするのもいいですが、笑いヨガで、いつのまにか日常がより良くなっていたというような、当たり前にある生活のベースが理想だと思います。
しかし、人それぞれ出会いのタイミングがあると思います。
私自身のことを考えると、最初の勤務先で笑いヨガに出会っていたら、今のようにはなっていないのです。
自分自身のいろいろな経験が、ここに運んでくれたと思っています。
私は流産を3回経験しています。
下の子は、学校でいろいろあり人間不信みたいになり、笑えない状況も経験しています。
だからこそ、より笑いの力を感じることができているのです。
たまたまタイミングよく、私と出会ってくれた人に、ストレスなく笑いヨガを好きになっていただけるよう、笑いヨガをお伝えできればと思います。
相手に合わせることは大事ですが、合わせすぎることは、必ずしも良いことではありません。
意外と思わぬところから、予期せぬ角度から、笑いヨガの魅力にはまる人が多いのです。
私の力が及ばない部分がたくさんあることは自覚しているので、不安になることはありません。
それでも、よりよく伝えられるようになりたいので、笑いヨガの技術とか話術、語彙力とか、あとはいろんなその他の雑学とかも含めて向上していきたいです。
日常にアンテナを立て、成長し続けたい
人に決められるのも、自分で決めすぎるのも、上手くいきません。
気合を入れて目標を作ると、急に拘束されたように窮屈に感じてしまう自分がいます。
自分のアンテナが、キャッチしたことにその時に心が動いたまま行動に移す。
当面は、そういうスタイルで生きていきたいです。
目標ではないですが、私の役割としては、いずれは両親を幸せに看取るときがきます。
そして、夫より長生きして、夫を看取り、何よりも愛してやまない4匹の猫も必ず私が看取ります。
自分のその生き様を、子供たちに見せていくのが、今のこの自分の進んでいる道の上にあるものだと考えています。
このご時世、それができるのは、すごく幸せなことだと思います。
私の人生の生き様も、死に様も、どういう風になるのか全くわからないのです。
どんな形であっても、そこには笑いがあってみんなが幸せで自分も満足している。
そこに向かって、いろいろなアンテナを立て、ワクワクすることを楽しんでいこうと
もうすぐ50になる私は思っております
60歳になったらまた違うことを思っているかもしれません。
その都度、気張らずにありのままでいいかなというと思っております。
ということで長々とお話をさせていただきました。
ありがとうございました。
人前に立つのが苦手な私が講師です
の題に心がひかれました。
内容を読み終わった時 全てに共感出来ました。機会が有りましたら、お会いしたいと思いました
ありがとうございました
笑いヨガ講師としてのご活躍が、ありのままの自分を生きる原動力になっていらっしゃるんだと感じました。
私も視点を変えて見てみると物事が違って見えることに気がつき、日々新たな目標を持って前に向かって行こうと思います。
貴重な学びをいただきありがとうございました。