知的障がいのある方々と笑いヨガ:心がつながる時間をデザインする

今回は、新しく笑いヨガリーダーになられた方からのご相談をまとめてみました。

笑いヨガ講座の際には大変お世話になりました。

この度、知的障害者への余暇活動として笑いヨガを

1時間くらいでやってほしいと依頼されました。

注意点や喜ばれる笑いの体操がございましたら

ご助言いただきたくメールいたしました。

このように、笑いヨガを現場に活かしていこうとされている姿勢に、心からの拍手を送りたいと思います。講座主催者として何より嬉しいのは、実践していただくことです。そして、知的障がいのある方々とのセッションは、まさに「笑いの本質」が問われる現場です。どれだけ丁寧に、深く、優しく向き合えるのかが大切で、ご相談メールへの返信をたくさんの方に読んでいただきたいと考えました。

以下に、笑いヨガのだいご味である「一体感」「楽しさ」「安心感」のためのヒントを、8つのポイントにまとめました。

1.笑いヨガの土台は「一体感」づくりから

笑いヨガの本質は、どんな笑いの体操をやるかではなく、一緒に笑う一体感で「変化」をつくることです。どんなに素晴らしいアイデアがあっても、場がバラバラのままでは届きません。まずはみんなが同じリズムの手拍子と掛け声で、息を合わせる、それだけで場は一つになります。

基本は「ホッホ、ハハハ!」の基本リズムを声を出しながら手拍子で。さらに同じ動作で別バージョンの動作を入れるのもいいですね。

また、時間がたっぷりあるなら、笑いの自己紹介もいいかもしれません。

  • 2回手拍子をして、名前をいう。リズムに合わせてみんなが自己紹介をする。

  • 名前を言って「ハハハハハ」好きな食べ物(乗り物・スポーツ等でもOK)を言って「ハハハハ」を全員繰り返す。

シンプルだけど、笑いの体操を始める前に、みんなの心を一つにする手拍子や声出しが、セッションの空気を温かくします。

2.「できる・できない」ではなく「楽しい・楽しくない」を軸に

笑いヨガセッション成功のキーは、知的障がいのある方々とのセッションに限らず「正しくやること」よりも「楽しめているかどうか」です。

笑いヨガに“正解”はありません。

だからこそ、場をナビゲートするリーダーが、

  • 「できる・できない」にとらわれず

  • どんな反応も受け止めて

  • 変化を楽しむリードを心がけたいのです。

たとえば、動きが伝わらなくても大丈夫。

こちらの笑顔と声のトーンで、「安心」と「楽しさ」を届けます。

3.笑いの体操を選ぶなら「動きだけで楽しくなる体操」を

笑いの体操は、原則として何でもOK。

言葉の理解に差があるときは、直感的に楽しい体操が効果的です。

おすすめの体操:

  • ミックスジュース笑い:両手にコップを持ち、中味を移し替えながら「えー」といい、最後に飲みながら「ハハハ!」

  • 洗濯機笑い:体をブルブル揺らして「フフフ!」

  • 動物笑い:ネコ、ゾウ、カニなどの動作を全身運動にして「ハハハハハ」。

  • 風船ふくらまし笑い:「フー、フーッ」と風船を膨らませる動作を何度か繰り返した後、「パーン!」と笑って弾けながら走り回る。

動きそのものが面白く、対象者が何歳であっても子ども心を呼び覚ます動作の笑いの体操を選ぶと、自然と笑いが生まれます。

笑いの体操の例

4.“観察”こそリードの鍵:呼吸と反応を感じる

笑いヨガの現場は、いつもライブです。

だからこそ「相手をよく見ること」が最大の技術です。

  • 呼吸が浅くなっていないか?

  • 集中が切れていないか?

  • 表情や目の輝きに変化はあるか?

  • 参加者から、発言や提案があるか

これらを観察しながら、

  • 疲れてきたら深呼吸を入れる

  • 動きを止めて拍手に戻る

  • いったん座って目を閉じてリラックスする時間を入れる。

もちろん、発言があった場合は、そのアイデアを取り入れて一緒に笑いの体操を作りましょう。

場の「呼吸」に合わせて進めることで、誰ひとり置いていかないセッションが生まれます。

5.歌やダンス、ゲーム要素を取り入れて

笑いヨガは「笑い」だけではありません。

場があたたまってきた後、エネルギーがダウンしたり集中力の途切れが見えてきたら、歌やダンス、簡単なゲームを入れることで、空気感を変えることができます。

例:

  • 手遊び歌に笑いを入れる(「幸せなら手をたたこう」など)。

  • 簡単な真似っこダンス(リーダーのポーズを真似する)。

  • 音楽に合わせてポーズを取りながら歩くだけでも、ダンスになります。

  • ジャンケン列車:ジャンケンをして、勝った人に負けた人が後ろに繋がっていく

歌や音の力を借りることで、心と体がほぐれていきます。

じゃんけん列車

6.セッションのクライマックス:蓮の花笑い

最後はみんなで一つになれる笑いの体操で、クライマックスを感じられるようにしましょう。

例:

「蓮の花笑い」:輪になって手をつなぎ、中心に向かって咲くように、また外に広がるように笑います。

 

この体験は、言葉がなくても、「私はここにいていい」「みんなとつながっている」という深い安心感を参加者に届けてくれます。

7.笑いヨガはキャッチボール:投げ方も受け取り方も大切に

笑いヨガのリードは、一方通行の「指導」ではありません。

むしろキャッチボールのような“やりとり”です。

  • 自分が「玉」を投げる(どんな笑いの体操をするのか)。

  • 投げ返された玉をキャッチする(相手の反応を受け止める)。

  • 変化球やホームランでお手上げ!!も楽しむ(自分のプログラムを手放し、新しいアイデアにつなげる)。

この繰り返しが、セッション全体を生き生きとしたものに育てます。

静かに笑っている人、動かずに座っている人、その“反応”が「No」ではなく「その人なりのYes」かもしれません。

笑わせようとするのではなく、一緒にハハハの呼吸をすることのだいご味を感じてください。

ハハハの声が聞こえなくても、笑顔を見ることができなくても、あなたの投げた球を観たり、感じたりしていることを、忘れないでください。

8.そして、最後の一歩:グラウンディングで着地を

盛り上がった笑いの後には、地に足をつける時間=グラウンディングが必要です。

数分でよいので、静かな音楽に耳を傾けたり、深呼吸をします。

  • 床に寝てのリラクセーション(笑いの余韻を感じる)。

  • 椅子でのリラクセーション(掛け声に合わせ、誘導呼吸で深呼吸)。

笑ってハイテンションのまま終わらせず、グラウンディングをていねいに一緒に呼吸を合わせることで、穏やかに、深い体験として印象に残ります。

手足ブラブラ ゴキブリ体操

写真のコメント最後に手足をぶらぶらさせながら笑い、そのままグラウンディングに入る

さいごに:あなたの“やってみよう”が、希望になる

知的障がいのある方々との笑いヨガは、リーダーにとっても多くの学びがあります。

「何が正解か分からない…」という戸惑いもあるかもしれません。

でも、大丈夫。

笑いヨガは、方法や理論ではなく、「あなたがそこにいて、共に楽しもうとする気持ち」そのものが最大の贈り物です。

「うまくやろう」より「一緒に楽しもう」

この想いを胸に、ぜひ笑いヨガを届けてください。

そして何よりも、今回ご紹介した「観察力」や「キャッチボールの感覚」は、実はすべての笑いヨガセッションに共通して大切なことです。

対象者の年齢や特性に関係なく、リーダーが相手をよく見て、今その人に届きそうな「玉(体操や言葉)」を投げ、それに対する反応をしっかり受け取りながら、また次へとつなげていく──その繰り返しこそが、笑いヨガの真髄なのです。

私たちも、いつでも応援しています。

もしこの記事が、笑いヨガリーダーのヒントになれば幸いです。質問に、感謝いたします。

2 件のコメント

  • 月2〜3回知的障がい者の方を対象に笑いヨガをしています。
    説明をしても理解が難しいし、反応もこちらが受け止めづらいところがあるので、初めの頃は何をしたら良いのか戸惑うことが多かったですが、回を重ねていくうちに参加者さんたちが楽しんでくれているのがわかるようになりました。笑いのスイッチが入って笑いが止まらなくなる人もいます。
    今日は声が出ていたな、腕がぴーんと伸びていたな、なんだかノリノリだったな、最後まで参加できたな等々、参加者さんの変化もわかるようになってくるとより楽しくなります。何より、支援しているスタッフの方々も一緒に喜び、楽しんでくれるのがとても嬉しいです。
    障がい者のみなさんの好きな笑いは「ミックスジュース笑い」です。「今日は何飲む〜?」と問いかけると決まって「コーラ❗️」「オレンジジュース」ですが毎回楽しそうにやってます。
    タコ笑いや色々な動物、特にライオン笑いは人気です。舟を漕いだり、自転車に乗ったり、ヒコーキに乗ったり、説明がなくても体の動きでわかる笑いが受け入れてもらいやすいですね。
    私は笑いヨガの前に音楽をかけながらリズム体操をしています。知的障がい者の方たちはノリのいいリズム体操大好きですよ。曲は「パプリカ」を使うことが多いです。
    笑いヨガセッションの最後には体も大きく使ったあいうべ体操を行い、歌を歌って(季節の童謡が多いです)終了です。
    皆の笑顔からいつも沢山のパワーを頂いています。
    ご参考までに。

  • 詳しく、そして温かなお話をお知らせくださりありがとうございます。
    読ませていただきながら、自然と笑顔になっている自分に気づきました。

    知的障がいのある方々との笑いヨガのご様子、一つひとつのエピソードに温かさがあふれていて、どれも心に残りました。回を重ねる中で見えてくる変化や笑顔、それを支える喜びまで共有されていることに、大きな力と希望を感じます。

    「ミックスジュース笑い」や「ライオン笑い」など、楽しみながら自然と身体が動く工夫も素晴らしく、特に「説明がなくても体の動きでわかる笑い」が受け入れられやすいという点は、今後の活動にもとても参考になります。また、「パプリカ」や季節の童謡を取り入れたリズム体操・歌の時間も、参加される方々の心と身体を解きほぐす大切な時間なのだろうと感じました。お話を通して、笑いヨガがただの運動ではなく、心を通わせる温かなコミュニケーションなのだということをあらためて実感しました。本当にありがとうございます。今後の私自身の実践にも大いに活かしていきたいと思います。

    心より感謝申し上げます。

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