笑いヨガセッションのチューニング

笑いヨガセッションのチューニング

チューニングとは、ラジオと放送局の周波数をきれいに聞こえるように同調させることです。
また、楽器を調律して正しい音程を出すようにすることも、チューニングです。

演奏は最高でも、それぞれの楽器の音がズレていたら、音楽は台無しになるし、ラジオの周波数が合っていなかったら、ちゃんと聞こえません。

笑いヨガセッションも、チューニングが大切なのです。

笑いヨガのチューニングとは何なのか、どのようにチューニングするのかについて、オンラインサロン笑い道の勉強会“笑トレアドバンス”(2024年10月20日に開催)のテーマとして取り上げて学びました。

 

1.笑いヨガのチューニングとは

1-1.参加者とリーダーが同じ周波数

ラジオと放送局の電波の周波数や、楽器と楽器の間の調律がチューニングです。
笑いヨガにおけるチューニングとは、何でしょうか?

 

笑いヨガセッションの空間の中で、参加者と笑いヨガをリードする者が、同じエネルギーで変化していくことだと考えます。

参加者とリーダーそれぞれが、無理をすることなく、笑い、手拍子や笑い声でリズムを刻み、呼吸をし、身体を変化させていくのが笑いヨガセッションですが、最初からみんなのエネルギーがあっているわけではありません。

 

初めて笑いヨガに接する人は、最初は違和感を覚える方や戸惑う方もいます。
体調が万全でない方がいたり、笑いヨガが大好きで、ノリノリの人もいたりします。

それぞれの人のエネルギーを抑え込むことなく、皆さんのエネルギーをできるだけ同質のものとし、笑いの力を使って一緒に上げていきながら、チューニングします。

 

初心者のとまどいや、笑いの体操の好き嫌いが人によって異なるのは当然です。
違和感を覚えることもありますが、短い笑いの体操を共有することを続けているうちに起きる体や心の変化が起き、チューニングされていくわけです。自分の変化を自覚するのが難しくても、人の変化を見ながらみんなで一体感を感じられるようになるのが、チューニングなのです。

 

1-2.チューニングできてなかったらどうなるか

 チューニングができていない不協和音の中や、きちんと受信できていないラジオを聞いていると、どんどん気持ちが落ちます。笑
いヨガも同じで、チューニングができていないと、疲れたり違和感が大きくなったりします。

笑いヨガセッションは、本来は楽しい空間のはずです。
老若男女が集まり、ユーモアやジョークなしにただただ笑っています。

それを面白いと思う人もいれば、不気味だと感じる人もいます。
ひとそれぞれだし、全員が笑いヨガが好きではない人がいるのは仕方がないことです。

それでもリズムとハーモニーが整ったチューニングされた笑いヨガセッションであれば、好ましく感じる人が増えるはずです。

 

1-3.チューニングの重要性

 笑いヨガのチューニングは、楽器やラジオと違って基準がありません。
どこにチューニングするのかという課題があり、笑いヨガリーダーのファシリテーション能力が求められます。

笑いヨガセッションの始まりから高いテンションでいくと、ついていけない人がでてきます。参加者の「満足度」が徐々に高まっていくように、チューニングしていくのが無難です。
最初に周波数を合わせ、全員の周波数を徐々に高めていくというイメージです。

そのために、気持ちがひとつになるように、リーダーだけではなく参加者がお互い影響を与えあうように、そしてだんだん楽しくなるように、チューニングしていくのです。

 

2.チューニングがずれる理由

この項では、チューニングが必要なのか、具体的例をあげていきます。

 

2-1.情報と現実が違う

チューニングを意識しなくても、笑いクラブのような場だとチューニングが合わないケースは少ないです。
しかし、介護予防教室や研修講師、講演を依頼されたときは、かなりの割合で起こります。いくつか例を紹介しましょう。

 

例1:地方都市で精神保健福祉士の年次総会の記念講演の依頼

事前に精神保健福祉士の課題を調べ、実務者のお悩みを調べ、現役の人に連絡を取りお話も聞きました。
そうして、多くの精神福祉士が抱えるであろうストレスの原因をまとめ、笑いヨガでストレス解消しましょうという組み立てで笑いヨガ体験と講演をやる予定でした。

実際行ってみると、精神疾患のある患者さんがたくさん参加していました。

彼らは、座りっぱなしの講演は疲れるので、多分途中退席しますということで、座席が入り口付近に指定されていたのですが、最後までいて質問までいただきました。

さらに、当日わかったことは、聞いていた参加者数の倍近くの参加者がいたのです。

これは、せっかく遠方から講師が来るのだからということで、市民公開講座になっていたのです。
精神保健福祉士に伝えたかったメッセージを伝えつつ、精神疾患がある患者さん、一般市民のための笑いの効用と実践講座になりました。

 

例2:ある大学の交流イベント(Home Coming Day)での依頼

ホームカミングデーは、現役の学生、教職員・地域の方だけでなく卒業生が母校に戻り、同窓会を兼ねて再会します。
このイベントでは、各学部が講師を呼び、キャンパスのあちこちで講演が行われる形でした。

私は看護学部にお招きいただいたので、若い現役看護師が集まると思って90分の講演を準備しました。
ところが、卒業生は一人も来ず、教員と他学部の教員たちが集まってきたのです。

 

最初に依頼を受けたときの情報で準備をしますが、直前に再確認しても、わからないことは多いのです。

言い換えれば、どんなに準備をしても、当日のチューニングが必要であるということです。

 

 

2-2.参加者に原因がある場合

 

2-2-1.笑いヨガに拒否反応がある人

自治体等が主催する介護予防教室やボランティア研修でも、笑いヨガを採用されることは多いのですが、その場合あきらかに笑いヨガに反感を持っている人がいる場合があります。

 

 

講師としての笑いヨガリーダーの責任範囲外なのですが、笑いヨガが嫌いな人がいる事実に対応しなければいけないのは、笑いヨガリーダーなのです。

 

東京都のある区が募集した市民ボランティアの研修で、
「笑いヨガ?何をふざけたことを。絶対に笑ってやるものか!」
と決心して参加された方がいます。

 

余談ですが、結果的にこの方は気づいたら自分が笑っていて驚いたといいます。
そして「自分を笑わせた笑いヨガはすごい!」という考えに変わり、東京都に交渉して助成金を確保し、何度も自分の住む地域で笑いヨガ体験会を開催してくれました。

 

2-2-2.チューニングを乱す人テンションの高い人

ある自治体から働く人のためのストレスケアとして、笑いヨガ講演を頼まれたときのことです。

夕方の講演で、仕事終わりの人が集まる会でしたが、県外からの依頼だったので、その地域で笑いヨガをやっている方々にお声がけしていました。
地域のリーダーのうちの一人がものすごく大きな声で笑うのです。

まだ笑いヨガが広がっていないときでしたがその声の大きさに、多くの人はただただ驚き、引いてしまっていました。

 

2-3.リーダーのスキル不足

2-3-1.リーダーのテンション

県外の地域の笑いヨガリーダーさんたち中心の会でしたが、リーダー格の方が、明るく元気な方で、ものすごく高いテンションで場を仕切りました。

全く初めての方や笑いヨガを始めたばかりであろう方もたくさんいらっしゃいました。
新しい人がそのテンションについていけないと思われないよう、自分のキャラクターを崩さず、チューニングしていくことが大切です。

 

2-3-2.自分が準備したセッション

前項で延べたように、事前に入手した情報と、実際に行ってみた現場は違ったというのはよくあることです。

高齢者の集いで、多くは80代と聞いてフレイル(虚弱)予防の笑いヨガを準備していったら、普通の後期高齢者とは全く違い、農業の担い手としてバリバリ働いていて、体力も運動能力もすぐれた人ばかりだったということもあります。

そのときに、自分が準備していったものに固執し、プログラムを組み替えることをしない場合、チューニングが上手くいきません。

 

2-3-3. リーダーの洞察力

リーダーの参加者の反応を見る力が、チューニングにはとても大切です。
目の前の人が、いま何を必要としているのかを読み取れたら、それを調整していくことができます。

もちろん、相手の心を読み取ることはできませんが、何か発信をしてみて、その反応を見てチューニングするといいので、笑いヨガリーダーの洞察力は重要です。

 

2-3-4.リズムをつくる

実は、笑いヨガセッションでのチューニングに大きな役割を果たすのが「リズム」です。

笑いヨガは、単純に手拍子とかけ声でリズムが作れます。
チューニングできていると感じさせるために、この手拍子と掛け声をバシっとそろえるだけで、チューニングができます。

とはいえ、単純ゆえに、深い部分でもあります。

 

 

3.笑いヨガのチューニングポイント

 

3-1.手拍子を大切にする

笑いヨガリーダーは、ぐいぐいリードするより、その場をつくる調整を先にしなければなりません。
「非言語の笑い」である笑いヨガですから、手拍子と掛け声で「場」をつくります。

手拍子の速度や、手拍子を始めるタイミングが適切であるか、手拍子が聞こえづらい等の理由で乗り遅れている人がいないか、そういった目の前で起きていることをしっかり観察しながら、手拍子で一体感を感じることができているかを確認してください。

実は、笑いヨガセッションでチューニングするのは簡単で、ホッホハハハの手拍子と掛け声のリズムが正確で参加者全員がそのリズムに同調すれば、ほぼチューニングは完成です。

手拍子と掛け声は、それぞれの笑いの体操の終了の合図として使うものですが、ホッホハハハのかけ声を、ピッタリ合わせるということは、息を合わせるということになります。

息が合う=呼吸を一致させることで、チューニングが簡単にできるのです。

 

3-2.セッション全体のリズム

 

3-2-1.説明は完結にイメージ共有を目指して

手拍子がバッチリあっているとしても、セッション全体のリズムが良くない場合があります。

リズムが乱れてしまう原因はたくさんあるのですが、たとえば笑っている時間は30秒程度なのに対して、笑いの体操の説明が数分以上続くと、せっかく笑った高まりが下がってしまうのです。

日本笑いヨガ協会では、笑いたくなる気分にするための文脈づくりを「背景」と呼んでいます。
背景を数秒間説明することで、「そうだな~」と共感を得られ、みんなの気持ちがチューニングされますが、それが長くなると「言葉」優先のセッションとなると、笑いヨガが本来持っている良さが損なわれます。

 

3-2-2.笑う心地よさを感じさせる

笑いヨガリーダーが長すぎるおしゃべりをすると、身体感覚の笑いのリズムができません。

ゆっくり過ぎる速度で歩くと疲れるように、リーダーの話が長いセッションも疲れるのです。
すると、ちょっとした水分補給やトイレ休憩を取ると、疲れてしまって座り込み、他の人とのおしゃべりが止まらなくなります。

これを避けるためには、笑っている時間をできるだけ長く、疲れが出る直前に深呼吸で呼吸を整え、徐々にピッチを上げていき、笑いながら体を動かすことの心地よさを味わってもらえるようにしましょう。

大きな声で笑う必要はないこと、無理に笑う必要もないのだという説明を入れると、安心して笑っていただけます。

 

3-2-3.適切な長さのセッション

笑いヨガセッションの適性時間はどれ位でしょうか? チューニングができていればどんな長さでも楽しく満足を得られるセッションができるのですが、それでも無限に長くできるわけではありません。

時間が長いときと、短いときではチューニングのポイントは違います。
長すぎるのも、短すぎるのも技術が必要で、笑っている時間が20分~45分程度だと、自然にチューニングができるのではないでしょうか。

基本は初めての人と、長く笑いヨガを愛好している人の気持ちをひとつにしていくことです。

笑い始める前に基本動作(手拍子とかけ号・深呼吸・元気ポーズ)や、笑いヨガの説明、笑いの健康への効果等の説明が5分~15分でやり、終了後にリラクセーションや呼吸法、感想を聞くのに同じ位の時間をつかうとしたら、チューニングがやりやすいのは30分~75分の笑いヨガセッションになります。

もちろん、経験を積んできたら10分でも120分でもみんなが一体感を感じ、満足感を感じていただける笑いヨガセッションができるはずです。

 

3-3.ポジティブなエネルギーを生む

笑いヨガセッションや講演会、研修会に参加する人は、いろいろな事情や考え方があります。
みんなのテンションをそろえていくことで、うまくチューニングできます。

チューニングできている状態には、「動き」に無理がないことも大事です。

ある人にとっては簡単な動作でも、別の参加者にとって難しいと感じる場合があります。

笑いヨガはいろいろな状況の人が来ます。
「難しい」「大変だ」と感じさせる変わりに、「チャレンジしたい」「よし!やってみよう」というポジティブなエネルギーを出せるように心掛けましょう。

笑いの伝染にはアイコンタクトは大切ですが、アイコンタクトもまた照れや圧を感じさせることになる場合があります。

一人一人に「あなたのことを観ているよ」というサインを送ってください。
必ずしも視線だけではなく、さりげない言葉がけも有効です。

 

3-4.声と表情を意識する

大きな声が、全体をまとめられる声とは限りませんが、小さな声では参加者全員に届きません。

張り上げた声や、力がこもった声だと、圧を感じさせてしまいます。
また、自分も参加者も疲れさせてしまいます。

大きな声でなく、”届く声”を心掛けましょう。
そして、できれば楽しさや一緒に笑える歓びが伝染する笑い方で、周りを巻き込みましょう。

 

4.まとめ

笑いヨガセッションおけるチューニングの方法について、細かく書いてきました。
もちろんこれだけではなく、チューニングに有効な方法はたくさんあります。

今回のオンラインサロン笑い道の勉強会である笑トレアドバンスでは、まずは気づいたことからシェアしました。

最後に、「参加者の多様性」に対応するヒントをまとめました。

 

4-1.普段から「仕入み」をしておく

人それぞれ、さまざま課題を抱えています。
介護予防のお年頃になると、健康問題のたくさんの課題があるはずです。

高血圧、高血糖、膝痛、五十肩、視力低下、歯、不眠、食欲減退等、加齢によるさまざまな課題が出てきます。

 

笑いヨガは治療法ではなく、私たちは医療的アプローチを行うことはできません。

しかし、多くの不調の原因はストレスと言われており、ストレス解消には運動が効果があることは自明です。
運動法として、笑いの体操をどのように活用できるのか、常日頃から研究することも大切です。

 

ちなみに高田佳子は、時間があるときはYouTubeでさまざまなエクササイズを研究しています。

 

4-2.どんなテンションにも合わせられるように

人間ですから、全ての人と相性が良いというわけにはいきません。
しかし相性の良い人だけを対象として、笑いヨガセッションを進めると不調和が生まれます。

 

笑いヨガは、子どものように無邪気になれる要素がふんだんにあります。

まずは、自分が大人の常識をはずし、子どものような無邪気さや純真さと大人の知性を合わせた存在として、相手をリードすることで、相手に必要な情報を届けながら、自由に体が動いて笑いやすくなるはずです。

 

4-3.中央値にフォーカスを心掛ける

笑いヨガの参加者を数値化することはできません。
年齢だとできそうですが、今は生物学的年齢と、身体機能の関係が相関しているとは限りませんので、あまり意味がないことです。

笑いヨガに抵抗感を持っている人や、大声で盛り上がって笑っている人など、極端な参加者に影響を受けすぎないようにしていただきたいという意味です。

 

平均値や最頻値に影響を受けてしまうと、参加者全体の期待や想いに応えられない場合があります。

 

参加者一人一人に丁重に接し、参加者全員がその場を作っている一因であることを感じていただけるよう、チューニングを試みていただきたいです。

3 件のコメント

  • 特別養護老人施設で毎週1回午後1~2:30笑いヨガをやらせていただいていますが、チューニングの難しさを痛感しています。耳が遠い人もいて大きな声を出すと「うるさい!」と突然怒鳴られたり、一緒にやって欲しくて体に触れたら「何をするんだ!」と怒られたり、介護士さんとの情報交換が足りなかったと反省しました。それでも1年半続けてこられたのは帰りがけに「またきてね、待ってるよ」と声をかけてもらえるからです。
    声を出すのも体を動かすこともあまりない方々です。表情も読み取れない私の非力さを感じていますが何とかこの笑いヨガのラインを参考にして日々励まされています。ありがとうございますm(__)m

    • コメントありがとうございます。
      文章だけでは伝わらない部分もあるので、ぜひ、勉強会にもご参加いただければ幸いです。
      これからもよろしくお願いいたします。

  • 笑いヨガを運動法としてどのように活用できるかを日頃から考える事。子供のような無邪気さと純真さと、大人の知性など…私にはとても難しいことばかりですが目標としていきたいと思いました。ありがとうございました。

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