笑いヨガはヨーガなの?

笑いヨガってヨガなの?

ヨーガと笑いヨガの効果から検証

「笑いヨガ」は、ヨガという名前がついていますが、ヨガのポーズをしながら笑うわけではありません。

「笑いヨガなんて、ヨーガじゃない!」と思っている伝統ヨガ愛好者は多いと思います。笑いヨガは、ヨガの効果が効率良く得られ、理念の多くも共通しています。

ヨガはやってみたいけど、「身体が固いからヨガは無理」「スタイル悪くてヨガスタジオは恥ずかしい」「膝が痛くてできない」という人が、ご自身や教えている生徒さんの健康と心の平和のために、安心してひとつの選択肢として笑いヨガに出会っていただければと考え、整理してみました。

尚、自分はヨガの実践者ヨギーだという人は、ヨガではなくヨーガと呼ぶことを求められる方が多いです。そこで、文字変換の都合上、ここではヨーガをYOGAと表記しています。

 

1.YOGAはエクササイズ?

 そもそもヨガとは何でしょうか。
ヨガの先生なら、誰でも一度は学んだことがあるYOGAの教科書があります。聖書とか六法全書のような本です。パタンジャリという方が書いた「ヨーガスートラ」という本です。

そこには、「YOGAとは心素の働きを止滅することである(Yogas Chitta Vritti Nirodhah)と書かれてあります。

何のこと?

今の日本では、YOGAというとフィットネスクラブやヨガスタジオ、公民館で行われている健康法というイメージですが、古典的には「身体」よりむしろ精神にフォーカスしているのがYOGAでした。

2.ヨガの変遷

ヨガの歴史は4500年前頃にさかのぼると言われます。最初は、哲学・儀式・祈り・奉仕活動でした。

その後瞑想中心のラージャ・ヨーガが誕生します。前述のパタンジャリによるヨーガスートラは、紀元前200年頃に書かれたと言われています。八支則といって、基本理念がヨガ哲学とともに、瞑想とヨガの稽古についても述べられていています。

瞑想をするためには、背筋をまっすぐに伸ばして長時間座る必要があります。そのためには、腰や足の関節が丈夫で柔軟である必要があり、身体を整えることも課題となりました。

それからさらに700年ほども経過してから、エクササイズのような動くヨーガ(HATA YOGA)が登場したということが、筑紫女学園大学人間学部教授の古田瑞穂先生の論文に書かれています。

その論文によると、アーサナ(ポーズ)とは、最初は座法(座り方)だったようです。そこから普段の生活では使わない筋肉をつかう15のアーサナが生まれら、時代を経るごとにどんどん増えてきて、今では無数のアーサナがあります。

ヨガの運動法は、最初は柔軟性・筋力・調整力でしたが、現代生活では早い速度で動くための工夫も加えられ、有酸素運動の要素も入ってきています。

つまりYOGAは時代によって、形を変えてきています。古い歴史と伝統に培われたものではありますが、古典的なその哲学は不偏的であるものの、やり方はどんどん変化しているのです。

3.20世紀に大きく変わったYOGA

5世紀頃にはマントラを唱えるタントラヨーガと、同時期に身体を重視する現代ヨガにつながるハタヨガが始まりましたが、インドの伝統的なYOGAの形が大きく変化したのは、20世紀初頭からです。

私は、英国の産業革命がヨガの流れを変えたのではと仮説を立てていますが検証はできていません。

産業革命により、安価な機械織綿製品がインドに流入し、綿工業は破壊され、19世紀半ばにはインドは経済的・軍事的に支配されてしまい、良くも悪くも英国の影響を大きく受けモノ・人・文化の交流がこれまで以上に活発になる中で、YOGAも古来の哲学と伝統を守るために、変化してきたのだと思います。

シバナンダヨガは、西洋医学の医者であったシバナンダ(1887~1963年)が、ヨガで多くの人を助けたいという想いでヨガの聖地であるリシケシで修行し、その地でアシュラムやヨガ大学を開設しました。また、卓越して優秀な弟子であったヴィシュヌヴァナンダを世界中に派遣し、世界中40か所に国際センターを開設します。

シバナンダは、たくさんの著書を英語で記し、世界中にヨガを広めたと言われています。
「奉仕しなさい、愛しなさい、与えなさい、浄化しなさい、瞑想しなさい、悟りなさい“Serve, Love, Give, Purify, Meditate, Realize”」という言葉に集約された教えはとしてもシンプルで、世界中の人に受け入れられました。

アシュタンガヨガは、一番運動量が多く、練習の仕方もしっかり構成されているヨガです。ティルマラ・クリシュナマチャリヤ(1925–1985)が土台を築き、インド政府公認の代替医療大学でヨガの名誉教授にもなったシュリ・K・パタビジョイス(1915-2009)とともに、90年代より現代社会に合わせて分かりやすくアレンジを加えていったものです。ヨーガスートラにあるヨガ八支則に基づき、合理的に組み立てられています。

アイアンガーヨガは、クリシュナマチャリヤに師事したBKSアイアンガー(1918- 2014年)によって生み出されたもので、肉体と精神の柔軟性とリラクセーションを得ることに加え、筋力やスタミナを高めて身体の歪を正していくことに重きを置きます。道具類を使うことが特徴で、ヨガの効果を最大限に引き出し、初心者や障がいがあってもできるように工夫され、1970年代より欧米から世界に広がりました。

ヴィンヤサヨガも、アシュタンガヨガから派生したもので、呼吸に合わせて流れるように呼吸に合わせて動くヨガで、運動と瞑想的内観の要素に焦点を当てたものです。

パワーヨガもまた、このアシュタンガヨガから派生したもので、90年代からハリウッドセレブからはじまり、ヨーロッパや日本でも大流行しました。
 他にもセラピー的な要素が強いクリパルヨガ、個人に合わせて瞑想・アサナ・呼吸法を構成するイシュタヨガ、古典ヨガを現代風にアレンジし、自然治癒力を高めるインテグラルヨガ等、どんどん新しいヨガが誕生しています。

 

4.YOGAの種類とYOGAがYOGAである理由

日本にも、沖ヨガがあります。日本におけるヨガの草分け的指導者である沖正弘師(1921-1985)が、古典的なインドヨガに東西のあらゆる宗教や修行法、日本の伝統文化、武道、東洋医学、民間療法などを組み合わせて体系化したヨガです。

 

今では対象者に合わせ、高齢者向けのシニアヨガ、子ども向けのキッズヨガ、妊婦さんのためのマタニティヨガというものもあります。

 

 環境で名付けられているヨガの分類もあります。公園でやるパークヨガ、椅子に座って行うチェアヨガ、天井から下げられた布を使って空中で行うエアリアルヨガといったものもあります。

 

また、身体のパーツを中心に行う目ヨガ・耳ヨガ・指ヨガといったヨガもあります。

 

もしかしたら、何でも有!?だったら、笑いヨガも泣きヨガも怒りヨガもあってもいいのではないでしょうか。

 

 いろいろなYOGAのクラスに出てみてわかったことは、たとえ身体のパーツを扱っているものであっても、それだけではないのです。「耳ヨガ」といっても、耳に触れることにより、全身の調整をしたり、脳をリラックスさせ精神を整えたり、呼吸と合わせて身体を変化させていくのです。

 

どのYOGAも、古典である「ヨーガスートラ」にある八支則を目指しているように思います。

 

八支則についてはここでは詳しくは述べませんが、下記の8つです。

  • 禁戒
  • 勧戒
  • 座法
  • 調気
  • 制感
  • 集中
  • 瞑想
  • 三昧

道徳(1・2)、身体(3・4・5・6)、精神(7・8)と古田瑞穂先生の論文ではまとめられています。

現代生活の中で、省略している部分があったとしても、生活・からだ・こころを整えていくために、時代に受け入れられる新しいYOGAの形が生まれ続けているのだと思います。

 

5.笑いヨガはヨガなのか

それでは、笑いヨガはどうでしょう。私は笑いヨガマスタートレーナーですが、考案者であるDr.カタリア夫妻からは、八支則や「ヨーガスートラ」のことを学んだことはありませんし、記述があるものを読んだことはありません。

しかし、笑いヨガは2つの理由から、ヨガであると考えられます。

Dr.カタリア著 笑いヨガのスピリット

5-1.笑いヨガは、実践法

八支則にある禁戒(してはいけないこと)と、勧戒(やったほうよいこと)は、Dr.カタリアの著書にご本人や笑いヨガ実践者の経験を交え、わかりやすく詳しく書かれています。

たとえば、第2章の笑いのスピリットの5つの原則は、下記のようなものです。

「自分を偽らず、ありのままでいること」
「人生の目的は、貢献することで成し遂げることではない」
「最善を尽くし、なりゆきに任せる」
「感謝」と「許し」
「あなたが変われば世界が変わる」

といったものです。

そして、具体的エクササイズも、「ケンカ笑い」「謝罪笑い」「感謝笑い」といったものがあります。

子どものように無邪気でいられることを助けるごっこ遊びのようなものや、「ハイタッチ笑い」「ライオン笑い」身体で寸法を測る「1メートル笑い」といったエクササイズもあります。

 ハハハハと笑いながら、さまざまな笑いの体操とホッホハハハの手拍子と掛け声(チャンティング)を繰り返します。合間に深呼吸も入ります。連続した動きの中には、ネガティブな感情が入りこむ余地はないのです。

また、マントラはありませんが、手拍子には「ホッホハハハ」という掛け声を入れます。
ハミングや片鼻交互呼吸法もグラウンディングのために取り入れています。

日本では、毎回取り入れているわけではありませんが、ひたすら笑い続ける笑い瞑想というプログラムもあります。

ヨーガスートラに記されている八支則のYOGAの考え方は、笑いヨガの教科書の中にも明確に記されているだけではなく、ただ笑うだけに見える笑いの体操や呼吸法、瞑想の中に、YOGAの理念が見られるのです。

 

5-2.4つの効果

 現代の運動法のひとつと処されているYOGAは、医学的にも心理学的にもさまざまな効果測定がされています。
 
日本でも、笑いの効果測定は1990年代から行われていますが、最近は笑いを発生させるものとして、笑いヨガが使われることが多くなりました。

●身体的効果
YOGAには、柔軟性向上や姿勢改善効果、ダイエット効果が期待できますが、自律神経が整うことにより、さまざまな健康効果が得られます。現代人はストレスにより、副交感神経の働きが悪くなりがちですが、ヨガの呼吸法やアーサナは、副交感神経をあげる運動です。

「笑い」は、交感神経も副交感神経も両方上げることがわかっています。その結果、笑いヨガは、血圧や血糖値、偏頭痛、便秘、耳鳴りといったものに効果が認められています。

●精神的効果
YOGAの精神的効果としては、ストレス対処能力、自己効力感、集中力、忍耐力といった効果が認められています。「笑い」によりストレスホルモンを下げるため、笑いヨガには強力な気分改善効果が認められています。

●生活改善効果
YOGAのストレス解消効果は、睡眠の質を上げ、早寝早起きの生活習慣がつきやすくなります。スタミナがつき、快適な生活に結びつきます。

柔軟性と筋力強化が期待できることから、転倒予防や怪我をしない等、予防的効果も大きいです。

笑いヨガにも同じ効果が期待できます。ただし、笑いヨガにはさまざまな笑いの体操がありますが、生活改善効果を期待するのであれば、ストレッチや筋トレの要素が入った笑トレ®の笑いの体操が望ましいでしょう。

●社会的効果
 YOGAを継続している人は、コミュニケーションが豊か(コンタクト回数増加)になるという研究結果があります。また、薬物乱用やトラウマからの回復といった効果もあるそうです。

 笑いヨガでは、社交性が向上し、シニアの交流が活発になるという結果が出されています。

6.まとめ

笑いヨガの理念には、YOGAの八支則が含まれています。さらに、笑いヨガには、YOGAと遜色ない効果が認められています。

 YOGAは、回数を重ねる毎にその効果が実感できますが、笑いヨガの場合笑うとストレスホルモンが下がるため、人によっては1回のセッションで気分改善が実感できます。

YOGAの実践者の方には、一度試していただき、いつのもYOGAと違う効果を確かめていただきたいです。

どんなYOGAが自分に向いているかを探している方には、一度試していただき、候補のひとつに挙げていただきたいです。

 笑いヨガをやっているサークルは全国にあるのですが、リーダーによってやり方はさまざまです。
学びたい方は、いきなり笑いヨガリーダー養成講座に参加するか、毎朝Facebookでやっている「朝の笑トレ」に参加してみてください。

笑いヨガの学び方Ⅰ 講座に参加する

 笑いは、本来人と人とのコミュニケーションから生まれるものです。笑いヨガは、笑いの伝染力を活用する方法ですので、笑いヨガリーダー養成講座に参加して学ぶのが、一般的です。

しかし、大きな声で笑う活動は自粛するという時代ですので、オンラインのリーダー養成講座もあります。

オンラインで学び、オンラインの笑いクラブをしている人もいます。
https://warai.shop/

 

笑いヨガの学び方Ⅱ とりあえずやる(無料)

オンラインではありますが、自宅でできます。

高田佳子のFacebookページで、毎朝6:50~7:00まで「朝の笑トレ」をやっています。説明もなく、ただ10分間笑いの体操をします。初心者でも、真似をしてくれればOKです。

https://www.facebook.com/takadayoshiko.waraiyoga

時間は遅れても、アーカイブされているのでいつでもできます。
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