講演・研修の満足度
ー「頼んでよかった」「参加してよかった」と思われる笑いヨガとは
笑いヨガの講演や研修を依頼されたとき、講師は何を目指せばよいのでしょうか。
- 参加者にたくさん笑ってもらうこと
- 会場を盛り上げること
- 楽しい時間を提供すること
と考えるかもしれません。
しかし、講演や研修の満足度は、参加者が大笑いしたか、会場が盛り上がったかで決まるものではありません。
参加者の中には、
- 楽しかったけれど、何のための研修だったのだろう
- 恥ずかしかった
- 自分には合わなかった
と感じている人もいるかもしれません。
すべての人に満足してもらうことは難しいものです。
それでも、
- 思っていたより参加しやすかった
- 笑うと気分が変わる理由がわかった
- 職場や家庭でも使えそうだ
- 参加者同士の距離が縮まり、話しやすくなった
という実感が残れば、講演や研修としての満足度は高いといえます。
講演や研修で求められる満足は、「楽しかった」、「たくさん笑えた」だけではありません。
- 自分に変化があった
- 何のために行ったのかがわかった
- 人との関係が変わった
- 自分の生活や仕事に役立ちそうだ
といった、いくつもの価値を実感することでつくられます。
今回は、主催者と参加者の双方に、「頼んでよかった」、「参加してよかった」と思ってもらうために、講師として考えておきたいことを整理します。
目次
1.主催者は、なぜ笑いヨガを依頼するのか
笑いヨガの講演や研修は、さまざまな目的で依頼されます。
地域の健康講座であれば、
- 高齢者に楽しく身体を動かしてもらいたい
- 閉じこもりを予防したい
- 地域の交流を促したい
という目的があるでしょう。
企業研修であれば、
- 職場のコミュニケーションをよくしたい
- ストレス対策に役立てたい
- 社員に気分転換の方法を知ってほしい
- チームの一体感をつくりたい
と考えているかもしれません。
福祉や介護の現場では、
- 利用者に楽しんでもらいたい
- 職員自身の心身を整えたい
- 現場の雰囲気を明るくしたい
という依頼もあります。
学校や教育関係では、
- 子どものストレスをを和らげたい
- 自分らしい表現ができる場をつくりたい
- 教職員にセルフケアを学んでもらいたい
という場合もあります。
つまり、主催者が求めているのは、笑いそのものだけではありません。
笑いヨガを通して、参加者や職場、地域に何らかの変化が起きることを期待しているのです。
健康、交流、ストレス対策、チームづくり、介護予防、コミュニケーション。
笑いヨガは、そうした課題に働きかけるひとつの方法として選ばれています。
講師は、まずこの点を理解する必要があります。
2.主催者と参加者の意識にはギャップがある
講演や研修で特に注意したいのが、主催者と参加者の意識の違いです。
主催者は、
- 皆さんに楽しんでもらいたい
- 元気になってほしい
- 積極的に参加してほしい
と考えていても、参加者が同じ気持ちとは限りません。
参加者の中には、
- 上司に言われたから仕方なく来た
- 何をするのか知らされていない
- 笑いヨガには興味がない
- 人前で笑うのは恥ずかしい
- 忙しいのに研修に参加させられた
- 身体を動かすとは思っていなかった
という人もいるでしょう。
主催者は期待している。
しかし、参加者は警戒している。
このギャップは、講演や研修では珍しいことではありません。
主催者から、
「うちの職員は元気がないので、大いに笑わせてください」
「とにかく盛り上げてください」
「全員立って、積極的に参加させてください」
と頼まれることもあります。
しかし、参加者の状態によっては、その要望どおりに進めることが適切ではない場合もあります。
無理に笑わせようとすれば、笑いヨガへの抵抗感や嫌悪感を生むことにもなりかねません。
主催者の要望に応えることは大切です。
同時に、実際にその場にいる参加者が、どのような気持ちで座っているのかを見極める必要があります。
3.依頼内容を深く理解する
笑いヨガの依頼を受けたとき、「何笑いをしようか」と考えることから始める人がいます。
しかし、何笑いをするかは、それほど重要ではありません。
まず確認するのは、依頼の目的です。
- なぜ、笑いヨガを依頼したのか。
- 参加者は、どのような人たちなのか。
- 参加者には、どのような課題があるのか。
- 参加者は、何を期待しているのか。
- 主催者は、何を期待しているのか。
- 終了後、参加者がどのような状態になっていれば、この講演や研修は成功といえるのか。
「笑いヨガの講座を60分お願いします」という同じ依頼でも、高齢者を対象とした介護予防の講座と、企業の管理職研修とでは、目的も伝える内容も異なります。
笑いの体操をいくつ行うか。どの体操を選ぶか。
それが、プログラムの中心ではありません。
依頼の目的と参加者の課題を理解し、そのために必要な体験、説明、問いかけを組み立てることが大切です。
主催者の意図を丁寧に聞き取り、その場に必要な構成を考えていきましょう。
4.ギャップを事前に調整する
主催者と参加者の期待のずれを小さくするためには、事前の打ち合わせが重要です。
確認するのは、年齢、人数、会場、時間といった条件だけではありません。
たとえば、次のようなことを尋ねます。
- 笑いヨガを取り入れようと思った理由は何か。
- これまで、どのような講演や研修を行い、参加者の反応はどうだったか。
- 参加者には、どのように案内するのか。
- 参加者は自分で申し込むのか、職場から参加を求められているのか。
- 主催者として、最も期待していることは何か。
- 参加者が抱えている課題や、最近気になっていることは何か。
- 身体的な配慮が必要な人はいるか。
こうした確認を通して、参加者の様子や期待、抵抗感を想像することができます。
講師と主催者が、「どのような状態になれば、この講演や研修は成功なのか」を共有しておくことも大切です。
主催者の担当者が笑いヨガについて詳しく知らない場合は、どのようなことができるのかを説明し、当日への期待を持ってもらう必要もあります。
会場についても、広さだけではなく、椅子の配置、採光、風通し、空調、音の響き方などを確認しておきます。
現地を事前に見ることができなくても、できるだけ情報を集めておくことで、当日の負担や混乱を減らすことができます。
5.最初に抵抗感を下げる
講演や研修の参加者は、自分から笑いクラブに来た人とは違います。
笑いヨガを初めて知る人も多く、
「理由もなく笑うなんて不自然だ」
「人前で笑うのは恥ずかしい」
「ふざけたことをさせられるのではないか」
と考えているかもしれません。
これから何をするのかを簡潔に伝え、無理に笑う必要がないことを納得してもらいます。
無理をする必要はないとわかると、参加しやすくなります。
6.短時間でも変化を実感できるようにする
講演や研修は、笑いクラブのように継続して参加する場ではなく、1回限りのことが多いものです。
連続講座であっても、毎回、その時間の中で体験が完結するように考える必要があります。
60分、90分、120分という限られた時間の中で、参加者が自分の変化を実感できることが、満足度に影響します。
- 身体が温まった。
- 呼吸がしやすくなった。
- 眠気が取れた。
- 周囲の人の表情が変わった。
- 声をかけやすくなった。
- 人と話しやすくなった。
- 会場の雰囲気が変わった。
こうした変化は、その場で感じることができます。
講師が、
「笑いには、このような効果があります」
と説明するだけではなく、参加者自身が変化に気づけるような問いかけをしましょう。
「始める前と比べて、身体はどうですか」
「呼吸や声に変化はありますか」
「周りの人と話しやすくなりましたか」
他の参加者の感想を聞いて、自分の変化に気づくこともあります。
体験したことの意味を、自分で確認できる時間をつくることが大切です。
7.一体感は、全員が同じことをすることではない
講演や研修で、主催者が期待することのひとつに「一体感」があります。
一体感とは、全員が同じように身体を動かし、同じ大きさの声で笑うことではありません。
参加の仕方には、違いがあってよいのです。
- 同じ時間を過ごす。
- 普段はしないことを一緒に体験する。
- 近くの人の表情の変化に気づく。
- 参加者同士が評価し合うのではなく、それぞれの参加の仕方を認める。
こうした体験が、人と人との距離を縮めます。
誰かが、
「もっと笑って」
「ちゃんとやって」
と言えば、会場に緊張が生まれます。
リーダーは、参加者同士が笑い方や動きを評価する空気をつくらないようにします。
誰もが、自分なりの参加の仕方で、その場にいてよい。
その安心感が、一体感につながります。
8.楽しさだけで終わらせない
講演や研修で笑いヨガを行うと、終了後に、「楽しかったです」という感想を多くいただきます。
もちろん、楽しいと感じていただけるのは、とてもうれしいことです。
ただ、楽しかったという思い出だけで終わってしまえば、笑いヨガは、その場限りの特別な体験になってしまいます。
笑ったことで、自分の気分や身体にどのような変化があったのか。
なぜ、日常の中で笑う機会を増やすことが大切なのか。
自分の暮らしや仕事の中で、どのように活かせるのか。
そんなことを考えながら、持ち帰っていただきたいと思っています。
楽しさだけが強く残ると、笑いヨガは「その場を盛り上げるためのレクリエーション」と受け取られることがあります。
一方で、理論や研究の説明ばかりでは、実際に笑ってみることの意味が伝わりません。
まず体験する。
自分に起きた変化を感じる。
そして、その変化がなぜ起きたのかを知る。
体験と理論の両方があってこそ、笑いを日常で使えるものとして持ち帰ることができます。
講演や研修で大切にしたいのは、その場で笑って終わることではありません。
笑いを、自分の生活に活かすきっかけにしていただくことです。
9.主催者の満足と参加者の満足をつなぐ
講演や研修では、まず、依頼した主催者に「企画してよかった」と感じていただくことが大切です。
主催者の満足度には、目的や趣旨に沿った内容だったか、参加者の反応はどうだったかということだけでなく、安全に進行できたか、時間どおりに終了したか、苦情やトラブルがなかったかといったことも関係します。
笑いヨガでは、大きな声を出すことがあります。
隣室や周辺の施設に音が響き、苦情につながる可能性もあります。
こうしたことも事前に予測し、会場の状況を確認しておくことが大切です。
途中で苦情が入れば、参加者が落ち着いて体験できなくなり、講演や研修の満足度にも影響します。
一方、参加者にとっての満足は、
「楽しかった」
「気づきがあった」
「安心して参加できた」
「思っていた以上に自分にもできた」
「生活や仕事に役立ちそうだ」
といった実感です。
主催者と参加者では、満足を判断する基準が異なるように見えます。
しかし、参加者が自分の変化を感じ、笑いを生活や仕事に活かそうと思えたなら、それは多くの場合、主催者が笑いヨガを依頼した目的にもつながります。
講師の役割は、主催者の要望どおりに参加者を動かすことではありません。
主催者が解決したい課題と、参加者が抱えている課題を結びつけ、双方にとって価値のある時間をつくることです。
10.成功の基準を持つ
講演や研修の成功は、
「何人が大笑いしたか」
「どれだけ会場が盛り上がったか」
ではありません。
近年は、脳科学だけでなく、心理学、医学、社会学など、さまざまな分野で笑いの効用が研究されています。
講師には、そうした研究や知識を伝えるだけでなく、参加者一人ひとりが、笑いの効用を自分なりに実感し、生活や仕事に持ち帰れる時間をつくることが求められます。
のためには、講師一人ひとりが、講演や研修を評価するための基準を持っておくことが大切です。
笑いヨガの講演や研修では、次のような点を確認します。
- 依頼の目的を確認し、正確に理解できたか。
- 主催者と参加者、それぞれの思いや状況を想定し、柔軟に対応できたか。
- 参加者が安心して、自分なりの方法で参加できる場をつくれたか。
- 短い時間の中でも、心身や人との関係の変化を実感できるように工夫したか。
- 講師自身がリラックスし、楽しさを大切にしながら、正確で実用的な知識を伝えられたか。
- 依頼の目的に沿った内容だったかを、主催者とともに振り返ったか。
笑いヨガ講師は、笑いの体操を行い、楽しい時間を提供するだけの人ではありません。
主催者が解決したい課題と、参加者が抱えている課題を理解し、参加者が自分の変化に気づくための場をつくる人です。
主催者の、
「この講師に頼んでよかった」
という満足。
参加者の、
「この時間に参加してよかった」
という満足。
この二つをつなぐことが、講演・研修講師として提供したい笑いヨガではないでしょうか。








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