「やりたい!」を引き出す磁力。また会いたいと言われる講師の「在り方」とは
はじめに
「人が動きたくなる関わり方 × また会いたい講師の在り方」。
2025年12月、オンラインサロン『笑い道』では、このテーマで「笑トレアドバンス」を開催しました。
高田佳子の笑いヨガ講師歴は、2026年1月で17年目に入ります。
しかし、笑いと健康の講師としては、それよりさらに10年以上前から活動の機会がありました。
笑いヨガと出会ってからは、リピート率が各段に上がり、さらに主催者だけではなく、受講者の方が自ら「別の場所でもやってほしい」と紹介してくださるなど、どんどん笑いと健康の講演の回数が増えてきました。
今回のテーマが決まった背景には、ある「笑いヨガティーチャー」との出会いがあります。
今は地元でバリバリ活躍している彼女は、かつて私のオンライン講座を受講し、「どうしてもこの人に会いたい」という強い思いから、仕事・子育て・介護という多忙な日々の中、家族や職場を説得してまで会いに来てくれました。
「人が動きたくなる関わり方」と、選ばれ続ける「また会いたい講師の在り方」について、伝われば幸いです。
1.人は「正しさ」では動かない
まず、大前提として、人は自分が聴きたい話しか聞かないと言うことです。
どんなに自分にとって大切なことであっても、「はいはい、知ってますよ!」と流してしまい、聞いてくれません。
それは、 人は、理屈で説得されるのが嫌いだからです。
でも、心が動いたら、からだも動きだします。
「やらされる」から「やりたい」に変わった瞬間に、爆発的なエネルギーを発揮します。
では、どうすれば人は「やりたく」なるのでしょうか?
「笑いましょう」「元気を出しましょう」「動きましょう」。
これらはすべてコントロールするキーワードであり、命令であると感じてしまうので、相手の無意識はこれを拒絶します。
一般社団法人笑いイノベーション学会理事で、元NHK「ためしてガッテン」の総合演出をしていた北折一さんは、「ましょうの女になるな(魔性の女)」と言っています。
大切にしたいのは、「インビテーション(招待)」です。
「ここは何をやってもOK!安全ですよ」
「ここでは、どんなあなたを出しても大丈夫」
「一緒に、ちょっと面白ことやらない!?」
と笑いヨガという少し奇妙で風変りなものをやりたい雰囲気をつくります。
言葉ではなく、講師自身の全身から発するバイブレーションで、その場に「心理的安全性」という土台を作ります。
自分が誰よりも先に楽しみ、誰よりも先に心を開き、一緒にやりたい気分にさせます。
楽しそうな人の姿を見て、参加者は自分もやりたいと勝手に動き出すのです。
人を動かす力とは、引っ張る力(Pull)ではなく、惹きつける磁力(Magnetism)なのです。
2.相手が聴きたい話をする
ここからが今日の本題であり、秘訣です。
人が喜んで聞きたがる方法は、とてもシンプルです。
それは、「相手が聴きたい話をすること」です。
とてもシンプルですが、簡単とはいえません。
ほとんどの参加者は、「自分自身、何を聴きたいか分かっていない」ということなのです。
だから、まずは人を惹きつけ、信頼され、心を動かす存在にならなければいけません。だからこそ、「笑いヨガのすばらしさ」「笑いの健康効果」をいくら力説しても、それは逆効果になってしまうのです。
「へぇ」
「なるほどね」
「きっといいものなのでしょう」
で終わってしまわないためには、「笑いヨガ」ではなく、自分自身の魅力を伝え、「やりたい!」を引き出してこないといけません。
講師は、相手の「心の奥底にある声」を聴き、それを言葉にして、さらに「自分に必要だ!」と確信してもらわないといけません。
相手の表情、呼吸、会場の空気の澱みや張り詰め方。
それらを五感すべてで察知し、彼らが言葉にできずに抱えている「不安」や「渇望」を感じ取るのです。
見えない声を観るためには、慣れが必要ですが、笑いヨガを使う場合、比較的簡単です。
ある笑いの体操をやって、OKなら反応は良いし、OKでなければそのアプローチは違うということです。
たとえば、膝痛予防の体操があります。それを笑いの体操にしたのが「ヒの字笑い」です。
「膝痛はこんな原因で起こる、だから予防のためにこういう体操をした方が良い」と言われても、「それはそうですね」「わかってますよ!」「私は膝は大丈夫」という反応しか来ません。
しかし、笑いの体操で「ヒの字」笑いをやってみるとします。
椅子の座ってカタカナのヒの字のポーズをして「ハハハハハ」と笑うだけですが、膝痛予防のポーズと似ています。
終わった後で、脳が楽しいと錯覚するので、早く感じられたであろうことを、指摘します。
「1、2、・・・・」「あと3回!」と号令をかけられるより、「ハハハハ」と言っているうちに、終わったことに楽にできることを説明し、「笑いヨガは、介護予防の体操が楽にできる」と説補足します。
すると、「楽で効果がある体操を知りたかった」という心の奥底の声に光が当たります。
それに気付いた瞬間、相手はハッとして 「そうか! 私はこれが聴きたかったんだ!」 「私は、こういう体験をしたかったんだ!」
自分の隠れた願望に気づかせてくれたことで、信頼関係を築き易くなります。
一緒に笑ったり、子どものような遊び感覚の笑いの体操で、講師と参加者の間の壁が取り除かれ、大きなエネルギーの渦が生まれます。
講師のリードで参加者同士が笑いの伝染を起こしあう世界で参加者のエネルギーがどんどんアップします。
3.【事例】場を整える
理論だけでは伝わりにくいかもしれません。
私の経験の中から、象徴的なエピソードをお話ししましょう。
ある講演会でのこと。椅子を参加者に並べ変えるお願いをしました。
どのように並べるのか詳しい指示を求める質問に対し、私は「適当にお願いします」とお答えしました。(通常の講演会とは異なるためです)
すると、「人に指示を出しといて、適当とはどういうことか、馬鹿にしているのか」と大声で怒鳴った男性参加者がいました。
会場の空気は一瞬で凍りつき、笑うどころの雰囲気ではなくなりました。
私は、いつも通り普通に講座を始め、徐々に大笑いの雰囲気をつくり、そのことは忘れられているかのように見えましたが、その男性の顔は、固いままであることに気づきました。
2つの液体を混ぜるという笑いの体操をしている最中に彼に、「どちらのご出身ですか?その地域に銘水はありますか?」と質問しました。
どぎまぎしまがら「……東京だ」とぶっきらぼうに答えました。
会場の誰もが固唾を飲んで見守る中、私は 「あら、東京!最近ペットボトルで「東京水道水」という名前のお水が売られていましたが、ご存じですか?」と聞きました。
その瞬間、会場がドッと沸きました。
「気まずい緊張感」が、一瞬にして笑いへと昇華されたのです。
彼の表情が緩み「知ってるよ」とのこと。そのまま水を混ぜて飲む笑いの体操に移行し、その後の緊張感は溶けてなくなりました。
ここで何が起きたのか? 解説しましょう。
- 排除しない 怒ったことで空気を悪くしたと自覚している人に、私はあえて関わることで、「一緒に笑っている仲間ですよ」というメッセージを送りました。
- 成功体験 「ご出身は?」という簡単な質問に答えたことで彼は「場を盛り上げた人」になりました。
- 潜在的願望への回答 会場の全員が「この空気をなんとかしてほしい」「安心して笑いたい」と願っていました。私はその「心の声」を聴き、ユーモアという形で答えを提示しました。
これは、場を保つ、つまり良い雰囲気をキープするということです。
ピンチがあっても、それを材料として、大きな笑いを生み、場を盛り上げた例です。
笑いヨガセッションや講座のテクニックではなく、講師の「何が起きても大丈夫」という揺るがないステート(状態)と、一緒に笑うという視点が、場の空気を書き換えたのです。
4.また会いたい講師の「在り方(Being)」
AIが進化し、知識や情報の価値が均一化していく今の時代。
情報はいくらでも手に入る今の時代、これからの講師やリーダーに求められるのは、「何を教えるか」よりも「誰であるか」です。
桑折町(福島)で笑いヨガ講師として大活躍の関口恭代さんは84歳(2025年12月)。
地域で大人気の笑いヨガ講師です。もちろん年齢相応の部分もあるのですが、元気いっぱいで、新しいことに果敢にチャレンジし、笑顔がすばらしく、とてもチャーミングなのです。
笑いヨガのテクニックや、話の上手さではないのです。
彼女が社会貢献し、みんなを大笑いの渦に巻き込んでいる姿に触れ、その年齢の重ね方に誰もが憧れます。
その人の持つ「在り方(Being)」に惹かれ、「また会いたい」と願うので、彼女の講座はいつも定員以上の申し込みがあるのです。
では、その「在り方」とは何でしょうか? 私は大きく3つの要素があると考えています。
- 圧倒的なエネルギーのGiver(与える人)であること
講師は、常に参加者よりも高いエネルギーレベルを保つ必要があります。
自分のコップが満たされていて、そこから溢れ出た「余剰エネルギー」があって初めて、参加者に分け与えることができます。
自分が疲れていたり、不安だったりしては、人の心を動かすことはできません。 だからこそ、日々の「笑トレ」で自分を整え、自分自身をパワースポットにしておく責任があるのです。
- Authenticity(自分らしさ)
講師であるからには、教える部分もありますが、講師と生徒の関係性ではありません。
一緒に場をつくる仲間なので、自分らしさをが必要です。飾らない人間らしさや、自分の失敗談さえも笑って話せる「チャーミングな隙」が、人を惹きつけます。
心から笑い、時には失敗も面白がっている姿を見て、参加者が安心し、自分らしさを出せ、心の距離が自然に小さくなる関係性をつくります。
- 鏡としての存在
参加者は、講師を通して「未来の自分」を見ています。 私が心から楽しんでいれば、彼らは楽しい未来を想像できます。
自分がありのままを堂々と生きていれば、参加者も「自分らしい人生を生きたい」と願います。
参加者が、自分自身の可能性に気づくための「鏡」としての講師であり、自分自身が輝けば、鏡に映る参加者も、イキイキと輝き始めます。
5.聴く力、観る力、感じる力
「人が動きたくなる関わり方」を実践するためには、目の前の人を「観る」解像度を上げることです。
「3.【事例】場を整える」でお話しした「怒鳴った男性」のエピソードでは、会場全体が笑いに包まれている中でも、表情が硬い人を見逃さなかったということが、ポイントになります。
気づいたからこそ、なかったことにせず、かかわりを持ち、関係性を変えることができました。
言葉を聞いているだけでは、相手の本当に「聴きたいこと」は見えてきません。
- 呼吸の深さ
- 表情の硬さ
- 声の緊張感
- 空気の軽さ&重さ
現場で五感をフルに使って感じるものです。
全身で相手の全てを感じてください。
自分からの発信で、一生懸命伝えようとするだけでは、見逃すことが増えます。
「私はあなたを全身で感じているよ」という意識を持つことで、相手も非言語で語りかけてくれるはずです。
ただし、見逃してしまうことを恐れないでください。
全体を把握することが大切なので、見逃したとしても、他の参加者や時間がサポートしてくれ、笑い合える場ができることを、信頼してください。
そして、あなたが相手の「言葉にならない声」が投げられたらしっかりとキャッチし、それを言語化し、笑いヨガのセッションや講義に無理なく取り込み、投げ返してください。
おわりに
繰り返しになりますが、大切なことはシンプルです。
- 参加者の聴きたい話をし、やりたいことをやる。
- 参加者が、まだ言葉にできていない「自分の聴きたい/やりたい」に気づいてもらう
- 洞察力を高める
参加者の生活が、より豊かに心身ともに快適でいられるよう、スキルを磨くのも大切ですが、まずは「自分自身のステート(状態)」を整えることが理想です。 あなたが最高に快適で、笑顔でいること。
笑いあふれる生活習慣をつくりましょう。
一緒に笑いましょう。 Let’s Laugh Together!
笑いヨガティーチャー養成講座は、ラフターヨガインターナショナルの資格講座です。
笑いヨガの部分は、オンライン(ライブ+アーカイブ)で学び、4泊5日の合宿講座では、笑いの健康効果をどのように伝えるのか、心の身体の繋がりの実際、自分自身のBeing=あり方を整えるための具体的方法を密度濃く学びます。
詳しくは、画像をクリック!(日本笑いヨガ協会のWebサイトにリンク)









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